環七はなぜ交通事故が多いのか

東京都道318号環状七号線、通称環七は交通事故が多いことで知られています。運転の仕事に就いている人の中には、環七を通行することを嫌う人も少なくありません。2018年の上半期に起きた交通人身事故の件数も、一番多かった道路は環七であり、その件数は931件と2位の環状八号線の672人に大差をつけています。『関連資料|弁護士交通事故

ここでは環七でなぜ交通事故が多く起きているのかを分析します。

環七の歴史と現状抱える問題について

交通事故が環七で多い理由としてまず知っておきたいのが、この道路の歴史と今現在抱えている問題についてです。

環七の歴史は古く、最初の計画は1927年の「大東京道路網計画」にまで遡ります。当時急速に人口が増えつつあった東京やその近郊の交通量増大に対応するため、都内の主要な地域を環状に通る片側二車線以上の道路として計画されました。

しかし戦時体制に入って計画のほとんどは凍結され、本格的に建設が始まったのは戦後しばらく経ってからです。1964年の東京オリンピック開催に合わせて急ピッチに建設され、現在の主要な道路のほとんどはこの時期に完成しています。

このように環七は道路としてはかなり古いため、現状の交通事情に見合ってない部分もあり、それが事故の原因になることもあって問題になっています。例えばその1つが慢性的な渋滞です。環七の不名誉な名物として慢性的な渋滞は知られており、特に朝夕のラッシュ時は混雑がひどいことから、この道路を避けるドライバーも少なくありません。

1日7万台にもおよぶ交通量の多さ

交通量は場所によって異なりますが、環七の場合は1日に7万台にも及びます。これは東京都道311号環状八号線、通称環八ですら1日あたり2万台であることを比べるとその多さが分かります。言うまでもなく日本でもっとも交通量の多い道路であり、この交通量の多さに比例して交通事故も多くなっています。

一方、交通量の多さに比べて環七の総延長は現在でも52.5キロで、これは都道としては最大規模ですが、これくらいの長さを持つ環状道路は世界的には珍しくありません。1日に7万台の交通量がある道路としてはむしろ異常に短いと言えます。

1つの目安として道路率という数字があります。行政面積に対して道路区域の面積がどれくらいあるかの割合が道路率であり、東京都の場合は16.41%です。これは高いように見えるかもしれませんが、世界の他の都市と比較するとむしろ低いと言えます。

例えばワシントンDCは25%、渋滞がひどいと揶揄されることが多いパリですら20%です。つまり交通量に対して必要な道路が足りていないことも、環七の交通事故の原因の1つになっている訳です。

2.8万台にも及ぶ貨物自動車の通行

都民の生活・産業・物流の根幹を担っているのが環七です。それゆえに貨物自動車の通行量も非常に多く、1日で2.8万台が利用しています。先に挙げた全交通量が7万台であることを見ると、貨物自動車の比率が非常に高いことが分かります。

すべての貨物自動車のドライバーが安全運転を心掛けてくれればよいですが、実態はそうではありません。速度超過や過積載、無理な追い越しなど貨物自動車が原因の交通事故も毎日多数発生しています。単独事故も多いですが人を巻き込む人身事故もまた多く、その対策は急務です。

道路行政の失敗

日本の道路行政は世界の中でも成功している部類だと言われます。国土のほぼすべての場所に道路をこれだけ延長できる点を見ても、その意見は妥当です。しかし失敗をしている事業もまた多くあり、最近では東京外かく環状道路の建設凍結や再開のゴタゴタもその1つとしてやり玉に挙がっています。

環七も道路行政の失敗の部分が問題となることがあります。車を優先した計画・建設は交通事故の増大と無縁ではありません。歩道橋の整備の遅れなど歩行者保護の問題もあります。また道路建設を優先するあまり、住宅地の近くを通る場所も環七は多いのが問題です。

建設当時は郊外であった場所も住宅地ができたりと後から問題になった面もありますが、それに対して長年有効な手立てを取れなかった道路行政にも責任はあります。住宅地と近い場所はそれだけ交通事故のリスクも高まり、実際に毎年多くが人身事故に巻き込まれています。

他県ナンバーの車の多さ

もう1つ環七の交通事故の多さを検証する上で外せないのが、他県ナンバーの車が多い点です。その理由は環七が都内の各エリアを結ぶ道路としてだけでなく、静岡県や群馬県といった近隣の県を結ぶ道路としても機能しているためです。

このような道路は都内では環七に限ったことでなく、環八や国道16号なども同様の問題を抱えています。道路に不慣れな他県ナンバーの車が交通事故を起こすのは、避けられないものがあります。しかし現状これといった改善策はなく、交通事故増大の1つの遠因になっています。

交通事故を体験して思ったこと

危険運転をするドライバーの存在

世の中には公道上でスピードを出したり、他の車と競争をしたりといったことに楽しみを見出す人もいます。これらの人たちの呼び名は、「走り屋」をはじめ、特定の走行を好む人は「ルーレット族」や「ローリング族」などがあります。

環七に限定すると「環七族」と呼ばれる人たちもいます。特に首都圏の道路はそういった人たちにとって非常に魅力的なものがあり、「首都高バトル」のように公道でのレースをテーマにしたゲームも高い人気があります。一部のドライバーによるものとはいえ、危険運転で交通事故がたびたび環七でも起きており、看過できない問題として警察も取り締まっています。

しかし実態はイタチごっこの様相を呈しており、完全に危険運転を行うドライバーを取り締まるのは難しい状況です。

環七で交通事故が多い交差点

最後に環七で交通事故が特に多数発生している交差点を取り上げます。いずれもデータは警視庁が発表した2018年の上半期における「各種交通人身事故発生状況」に基づくものです。まずワーストは環七と水戸街道が交差する葛飾区青戸8丁目の交差点です。

6件の交通事故が起きており、9人の負傷者が出ています。2位は同じく葛飾区亀有2丁目の江北橋通りの交差点で、こちらも6件の交通事故が発生し、8人が負傷しています。3位は練馬区目白通りの豊玉陸橋の交差点で、5件の交通事故で5人が負傷しています。

さらに同位で板橋区の板橋中央陸橋の交差点が並び、こちらも発生件数と負傷者数は同じです。